証券会社を検証

世はIT時代である。 IT革命というような表現で、これまでの資本主義経済とまったく違った時代がくるといわれている。
かつて「高度情報化社会」という見方が行われたが、それを超える経済革命が起こるとされる。 ITとはInformationTechnologyの頭文字であり、日本語でいえば、情報技術である。
しかし、それ以上の意味や広がりに注目して「IT革命」といわれている。 ITは、これまでの製造業を中心とした経済学による分析で対象とされてきたものとはまったく異なる経済的性質をもっている。
そしてこの性質が、これまでと違った新しい経済システムを生み出す。 たとえば、インターネットを使って仕事を行うと、基本的にこれにかかる費用は固定化されており、追加的にいくら使っても「限界費用はゼロ」というこれまでの製造業にない性質をもつ。
また、多くの人が共通して使うネットワーク、たとえば電力であれば、利用者が増えると電圧が下がるなどの問題を引き起こす。 ところが電話やインターネットは利用者が増えると通信する相手が増え、さらに便利になるという「正のネットワーク外部性」をもつ。
インターネットは、世界中のすべての参加しているコンピュータをひとつのネットワークの中に結びつけた。 このことが、経済取引や企業形態そのものを変える。
たとえば、消費者が注文すると、その情報はコンピュータを通じて生産現場に直接、入ることもできる。 しかも、それが自社のシステムである必要はなく、他社の生産システムを他社のコンピュータを通じて自社のものと同じように使えることにもなる。
すなわち、企業であれ個人であれ、他の企業の生産・販売などのシステムを自分のシステムと同じように使えるようになる。 これは消費者と企業のダイレクト取引、アウトソーシングなど、これまでにはなかった経済取引を生むことになる。

さらに、マーケティングを行うにも、これまでは、一方的な情報伝達しかできなかったものが直接、消費者の情報にアクセスできるようになり、また、広告においても、消費者が生産者にアクセスするというこれまでとまったく逆の方向での情報の流れを生む。 そして、これまでの経済主体は「企業」であったが、ITは企業の形態を大きく変えるとともに、これまでの企業そのものを不要にする変革を生んでいる。
ITが活用されることで、ベンチャー、SOHOといった形態が経済システムの主役に移行する。 バーチャル・コーポレーションといったこれまで考えも及ばなかったような経済システムが生まれてくる。
すなわち、IT革命とは、単なる通信手段の変革ではなく、経営システムや経済システムを基本から変えることである。 これが生産性はもとより、これまでの生産性の概念では評価できないようなタイプの経済的効率を実現することになる。
あるいは、これまでの経済活動のあり方、人々の生き方さえも変えることになる。 アメリカでの1990年代の好景気の継続の根幹にはこの変革があった。
インターネットの登場の意味は、実は日本経済にとってはもともとごく自然なことであるが、情報の共有を実現し、消費者情報を経済システムの軸に置いたところにあった。 これまで日本経済は、下請・系列といった企業間関係などのネットワーク経済の特徴を生かして高い生産性と競争力を確立した。
かつてのアメリカ経済では、市場経済での競争が基本であるために情報の共有を実現できず、また消費者情報よりも生産者情報が基本になる経済システムが設計されていた。 アメリカは、ITによってこれを大きく変えて、企業内外、消費者と生産者の間での情報の共有を実現したのである。
ITは日本の下請や系列と同じことをアウトソーシングによって可能とし、さらにバーチャル・コーポレーションにまで発展させている。 アメリカは、人間関係ネットワークによって運営されている日本よりも進んだネットワーク経済を生み出したのである。

しかも、日本型経営と違って閉鎖的な経済システムではなく、世界経済に対してオープンな形での経済システムに作り上げた。 そして、急激に変化する世界経済の構造変化をむしろアメリカ経済の発展に活用することに成功した。
ITは世界の経済システムを根本から変えることになる。 すなわち、この新しい技術は、「経済・経営がITを使って効率化を進める」という水準にとどまらず、「ITが新しい経営システム、新しい経済システムを生む」という大変革を引き起こしている。
IT革命は単にコンピュータや通信の技術の問題ではなく、経済システム、経営システムそのものの問題である。 すなわち、IT革命とは、技術的には通信技術の革命であるが、経済・社会的には経営革命であり、経済革命・産業革命なのである。
アメリカでIT革命が起こったのは、単に技術的な変化によるものではなかった。 1970年代に経済的困難に陥り、そこから脱却するために新しい経営システムを模索していたアメリカは、通信革命と経営システムにおける変革を一致させることにより、従来の企業社会を大きく変えて、人々に新しい生き方を提示するものを見出したのである。
こうして、IT革命がいわゆる産業革命に匹敵する大きな変革であるという認識が進みつつある。 かつての産業革命も大きな技術革新によって「法人資本主義経済」を生み出した。
そこでは企業が巨大な資本を中心にして労働者を集め、経済の主役となった。 ところがIT革命は、経済の主役を「資本」から「情報」へと移行させる。
「資本主義経済」から「知識経済」への移行が議論されているのは、まさにこの変革を意味している。 そして、その中心的役者であった「企業」に代わるものは「ネット」である。
すなわち、企業社会がネット社会へと変身する。 さらに、IT革命は経済システムのみならず政治、社会、文化など人間活動の面でも大きな変革をもたらそうとしている。

この変革をいかに日本の将来に結びつけるかが課題なのである。 このような性質はこれまでの製造業を軸としたこれまでの経済システムに大きな変革を与えることになる。
これは資本を使うことを中心にした経済への移行であった産業革命に匹敵する革命的な変革を起こすと予想されている。 経済システムは時系列的に見ても、また空間的に見てもこれまでも多様なものであったが、ITの登場はもっと大きな変化を引き起こしている。
少なくとも、これまでの経済学は製造業のイメージで構成されてきた。 それは生産には資本と労働が必要という生産関数を軸にして議論が行われてきた。
しかしながら、ITによって変化させられた経済システムでは、そのような製造業での常識がまったく通用しないような話が山のように起こってくる。 新時代の経済を解明するための新しい経済学の登場が是非とも必要となる。
IT革命に関しては、まだまだ十分な分析が行われておらず、今後の経済の発展のためには新しい「IT経済学」を生み出さなければならない。 ITについての議論は、革命的な変化であるにもかかわらず、従来の既成概念での理解でしかなされていないものがほとんどである。
「おもしろい読み物」から新しい経営・経済を考えるための「IT経済学」を創造していかなければならない。

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